安冨 真一
頂点と辺からなる図形をグラフといいます。2次関数のグラフというときのグラフとは意味が異なります。
例えば以下は3つの頂点とと2つの辺からなるグラフです。
次は5つの頂点とと6つの辺からなるグラフです。
グラフ上で次のルールによるゲームを考えます。このゲームは将棋や囲碁などのような 2人で交互に行うゲームです。私が学生の時に考案しました。
(1)頂点を一つ選んでおきます。それをAと記しておきます。
(2)先手はAを端点とする辺を選び別の頂点に移動します。ただし今後一度通った辺は通らないとします。
(3)後手もその頂点を端点とする辺を選び別の頂点に移動します。ただし一度通った辺は通らないとします。
(4)以下同様に繰り返していきますが、辺を選ぶことができなくなったら負けとします。
では、最初のグラフでゲームをしてみましょう。
まず始点を決めます。決めるのは2人で相談するか、第3者が決めてください。 図のように始点Aを決めました。始点を白丸にしておきます。今後移動した点を白丸に していきます。
始点から出ている辺は一つですのでそれを選び点も移動しておきます。 選んだ辺はもう使えませんので点線にしておきます。
後手の手番ですが白の頂点から出ている使っていない辺は一つなので それを選び点も移動しておきます。
次は先手の手番ですが白の頂点から出ている使っていない辺はないので 先手は負けになります。 このようにこのグラフでは始点を最初のようにすると、かならず 後手が勝つことになります。先手がどのような手をとっても 後手が適切な手を選択すれば後手が勝つことを後手の必勝とよびます。 逆に後手がどのような手をとっても 先手が適切な手を選択すれば先手が勝つことを先手の必勝とよびます。 またこのゲームには引き分けは生じません。 フォン ノイマンという数学者により、このようなゲームについては先手必勝か 後手必勝になることが1928年に示されています。ただし、個々の具体的なゲームについて どちら側が必勝になるかは別の問題となります。
では次のグラフで始点はAとしたときどちら側が必勝になるか考えてみましょう。 答えは下に書きますが、まずは考えてみてください。
この場合後手必勝になります。先手には2つの手がありますが、対称の関係ですので 本質的に同じことになります。そこで次のようにしたとします。
次に後手は図のような手を選びます。
次に先手は次のようにひとつしかありません。
後手の勝ち筋はひとつではありませんが次のようにしてみます。
やはり先手は次のようにひとつしかありません。
後手はAへの辺を選び後手の勝ちとなります。
この2段のピラミッド型のグラフを3段、4段...としていったグラフを考え一番上の頂点を 始点と定めたゲームを考えます。このn段のグラフをn段のピラミッド型グラフとここでは 呼ぶことにします。例えば以下は3段のピラミッド型グラフです。
岐阜高専の岡田章三先生によって次のことが示されました。
$n$が偶数または$3$の倍数とする。このとき$n$段のピラミッド型グラフのゲームは後手必勝となる。
証明は$n$が偶数の場合は先ほどの後手勝ちの手筋がヒントになります。 考えてみましょう。
この定理はさらに岐阜高専の中島泉先生により次の定理にまで拡張されました。
$n\notin\{2^m-3|m=2,3,\ldots\}$とする。このときこのとき$n$段のピラミッド型グラフのゲームは後手必勝となる。
この証明はなかなか気が付きにくいと思いますが、上の定理がヒントになります。
定理によりほとんどの$n$について後手が必勝になりますが$2^m-3$段の場合はどうなるでしょう。 $m=2$の場合は1段ですが、すぐ分かりますように先手必勝になります。
$m=3$の場合は5段ですが、これは少し難しくなりますが先手必勝になります。 ぜひこれも考えてみてください。
$m=4$の場合は13段ですが、これはじつはこれは先手必勝か否か分かっていません。 次は予想となります。
$n\in\{2^m-3|m=2,3,\ldots\}$とする。このときこのとき$n$段のピラミッド型グラフのゲームは先手必勝となる。
もし予想を解かれましたらご連絡ください。